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【スポクラコラム#1】スポーツビジネスは最も儲からないのになぜそれを薦めるのか?

最終更新: 2018年11月19日

ご支援している大企業の幹部に言われました。


「スポーツビジネスは最も儲からない商売。なぜ石井さんはそれを我が社に薦めるのですか?」


みなさんだったら、どう答えますか?


「わしゃ好きだから、やりたいんじゃ~!!」 というのは、本音ではありますが、正直すぎて、多分企業内では通じない。


「安倍政権が成長産業に指定しており、市場が拡大するからです」 これもまぁ、悪くない。 でも、なんとなく政府のいいなりでやるのって、嫌だよねって人もいます。 ここはもう少し、しっかりとした論拠付けが必要なんだと思います。


ここ3年間ずっと考え続けてきた、現在地点の私の論拠を少し書きます。 少し難しいので、添付の図と共に読んでみてください。




<前提> 前提として、

・商売=資本(キャピタル)を、現金(キャッシュ)に拡大好循環すること

と定義します。


資本とは、将来現金に変わるもの。商売の元です。商品を生産できる工場とか。 サービスやモノを作る、売る「人」とか。競合と差別化する「知識」とか。 自社製品の技術を守る特許とか、ブランドなども「資本」です。


日本がものづくりでこれらの総合的な資本を蓄積し、それを輸出産業でキャッシュにできたのは、


1)戦後、デミング博士の品質管理マネジメントなどの「知的資本」が入ってきた

2)日本の周辺のアジアで戦争が続き、日本の人口も増え、内需も外需も豊富だった


という、「資本」を「現金」に変える拡大好循環をとりやすい環境や幸運があったからです。


90年代ぐらいから、この商売(ビジネスモデル)に革命が起きます。それが金融革命と情報革命(IT革命)です。製造がダメになった米国で生まれた、「お金でお金を生む」「お金と情報でお金を生む」という、超効率的な商売のやり方です。


つまり、


金融ビジネス:現金→現金を生む

情報ビジジネス:現金→情報→現金を生む


というわけです。


ここにコンピュータと、インターネットによる世界取引が入った時に、一気にこの超ショートカットな商売が高速回転で世界中で回るようになりました。このビジネスモデルは、そんなに資本が必要ではない、というところに特徴があります。生産ラインや運搬、販売や在庫管理という従来の商売であった面倒なことが一切要りません。ただ、この商売モデルには別の欠点もあります。


このモデルは、「人」があまり必要ではないのです。


つまり、雇用を生み出さない。雇用がないということは、そこで人が学んだり、知識が蓄積されたり、関係が良くなったりということがありません。つまり、このモデルは、社会全体を見ると、「無形資本を全体的には減らしてしまう」リスクがあるビジネスモデルなのです。




さて、スポーツの商売はどういう仕組みになっているかというと、この真逆です。

図をみればわかるように、関係者は多いし、手間はかかるし、なんだかやることや準備することがいっぱいで、面倒です。 いろいろ手間をかけなければいけない部分はたくさんあるし、いろんな人材が必要になります。


「スポーツビジネスって、手間がかかるわりにこんな収入しかないんですか?」

「赤字なのになぜ存続できるんですか?」


よく質問で言われます。まさにその通りです。ではなぜ薦めるのか?


一つの答えは、「その分、その地域の資本が蓄積できる」からなんです。


今、日本は世界で優位性が減り、差別化ができなくなってきています。言い換えると、「それらをつくりだすいろんな資本が、不足してきている」ということです。


だから、日本が再興するためには、今は我慢して各地域に資本を貯めないといけない。 将来現金になるための「見えないちから」を蓄積しないといけない、と私は考えます。


バルセロナは、スペインがバルセロナ五輪後経済破綻したのちも、FCバルセロナという、フィロソフィでサッカー選手の育成を10年以上かけて行い、そこで産んだ優れた選手たちが、他では真似ができない試合をし、その哲学で経営をする無形の資本を蓄積しました。


さらにアントニオガウディの作品は、今でも建築や製作が続いています。未だ完成しないこの文化が、バルセロナを世界でユニークな都市としてのブランドにしています。これも地域の資本です。長期にわたって積み重ねられているので、他の都市が真似できないのです。 現に人口160万人のバルセロナの海外観光客は年間800万人以上、これは人口200万人の札幌の4倍の数にのぼります。


優れたスポーツのビジネスを各地域がなるべく多くの人を、産官学を巻き込んで行うことで、手間はかかるけれど、かかった分、地方の未来を作る資本を蓄積できる可能性がある、と私は考えています。そのためには、「地域資本をスポーツ・音楽で増大させる」という明確な考えと戦略にのっとって、スポーツで都市開発をしていく必要があります。


千葉市の熊谷市長は、このあたりをわかってスポーツや音楽コンサートなどの積極誘致を市政として行っているように感じます。 湘南ベルマーレの水谷氏は、「湘南という土地名はない。だからこそ湘南という文化や土地風土はベルマーレが創る必要がある」と以前おっしゃっていました。通じる考えだと勝手に思っています(違っていたらすみません)。




長くなりましたが、これが「今の日本で、スポーツビジネスを、将来の日本の成長のための様々な資本を増やすために投資すべき領域なんです」といろんな方に私が叫んでいる論拠なのです。


まとめると、短期的には現金化できません。


だから、すぐに儲けたいなら、ぜひ金融ビジネスや、情報ビジネスをご検討ください。スポーツビジネスは短期の現金化には、向いていません。



執筆者

石井宏司

株式会社スポーツマーケティングラボラトリー コンサルティング事業部

執行役員


東京大学大学院卒業(教育学修士)。研究テーマはインターネットと教育、オンラインのラーニングコミュニティ生成について。1997年にリクルートに入社。インターネットの新規事業、他社との事業アライアンス交渉、地方創生コンサルティング、メディアによる地域活性ビジネス、企業再生コンサルティングなどに従事。2009年に野村総合研究所に経営コンサルタントとして入社。経営改革、新規事業、企業再生などのテーマでコンサルティングを行う。2014年頃よりスポーツを中核とした都市再生や新成長産業としてのスポーツ産業の成長支援に携わるようになる。

スポーツ庁未来開拓会議提言、大学スポーツ改革検討会議委員、スポーツ庁技術審査員、沖縄スポーツ産業クラスター形成実行委員、大阪経済大学客員講師(スポーツ情報学)、関西財界セミナー2016スポーツ分科会問題提起者、Sports Analytics Japan2016, 2017実行委員、日本女子プロ野球機構事業理事などを歴任。現在に至る。

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